私の息子の結婚式でのあいさつです。
「自分がもの心ついた頃には、父親はいませんでした。でも不思議にさみしいと思ったことはありませんでした。それは母が自分を大切に育ててくれたからだと思います。」そう言ってくれました。思い出すといまでもそのやさしさに涙があふれてきます。
きっとさみしい思いはあったのだと思います。なかったといってくれたのは彼の気遣いです。
その彼が自分の子供をもって、育てる過程で笑顔をもらったり抱きしめたりする過程できっと失われていた部分を取り戻し愛情を上書き保存することができるのだと思います。
たとえば、幼いころ虐待を受け深く傷を負った場合、我が子を育てる過程で抱きしめたり笑顔を守っていく過程で自らをも、深く傷ついていた幼いころの自分をも抱きしめる、癒すことにつながるのだと思います。フラシュバックのように辛い記憶が呼び覚まされても、目の前の我が子の笑顔や体温を感じることで、背面にその記憶はなくはならないけれど場所を変えます。